昔から自分の髪には自信があった。黒くて太くて、艶があるのが当たり前だと思っていた。そんな私に影が差したのは、45歳を過ぎた頃のことだった。朝、洗面所の鏡の下に散らばる抜け毛を見て、最初は目を疑った。掃除機をかけてもかけても、すぐに髪の毛が落ちている。美容室で「少し髪が細くなりましたね」と言われたとき、胸が締め付けられるような思いがした。それからは、電車で座っている人の頭頂部をチェックしたり、テレビに出ている同年代のタレントの生え際ばかりを目で追ったりするようになった。自分が薄毛に悩むなんて、想像もしていなかったから。そんな私を救ってくれたのは、友人がプレゼントしてくれた1本の育毛剤だった。女性専用に開発されたというそのボトルは、化粧品のように美しく、ドレッサーに置いてあっても違和感がなかった。最初は半信半疑だったけれど、彼女が「これは自分を大事にするための時間だよ」と言ってくれたことが心に響いた。その日から、私と髪との新しい対話が始まった。お風呂上がりの清潔な地肌に、ひんやりとした育毛剤が染み込んでいく感覚。指先で頭皮を優しく揉み解すと、1日の疲れが溶け出していくような気がした。使い始めて2ヶ月。劇的な変化はなかったけれど、地肌のベタつきが消え、髪に自然な立ち上がりが生まれた。3ヶ月が過ぎる頃には、美容師さんに「頭皮が柔らかくなって、良い毛が生えてきていますよ」と言ってもらえた。その一言で、私の心はどれほど軽くなったことだろう。ケアを続けるうちに、食生活も見直すようになった。以前はパンで済ませていた朝食に卵を加え、おやつはナッツや豆乳に変えた。夜は11時までにベッドに入り、スマホを置いて深呼吸をする。こうした小さな習慣の積み重ねが、私の髪だけでなく、肌の色艶や心の安定まで整えてくれた気がする。今では、髪の変化を恐れる気持ちよりも、手入れをすれば応えてくれるという信頼感の方が大きい。育毛剤は、私にとって単なる薄毛対策の道具ではない。それは、年齢とともに変わりゆく自分を丸ごと受け入れ、慈しむための大切な儀式だ。鏡の中の自分と目が合うとき、少しだけ微笑むことができるようになった。豊かな髪は、自信を与えてくれる。そしてその自信は、誰のためでもない、自分自身の人生を明るく照らす光になるのだと、今の私は知っている。