AGA治療を開始した多くの人が最初に直面する大きな不安が、治療を始めたはずなのに逆に抜け毛が増えてしまう初期脱毛という現象です。この現象は医学的に見れば、乱れていたヘアサイクルが正常化に向かっている極めてポジティブな兆候なのですが、予備知識がない状態でこれに遭遇すると、薬が体に合っていないのではないか、あるいは薄毛が加速しているのではないかと強い恐怖を感じて治療を中断してしまいがちです。初期脱毛が発生するメカニズムを正しく理解するためには、まず髪の毛の成長サイクルを知る必要があります。通常の髪は成長期、退行期、休止期という3つの段階を繰り返していますが、AGAを発症している頭皮では、ジヒドロテストステロンの影響で成長期が極端に短くなり、多くの毛包が休止期に留まってしまいます。ここにフィナステリドやミノキシジルといった治療薬を投入すると、薬の成分が毛母細胞を活性化させ、休止期に入って停滞していた古い髪を押し出すようにして新しい健康な髪が下から生えてきます。つまり、初期脱毛で抜けているのは、放っておいても近いうちに抜けるはずだった弱々しい髪であり、新しい力強い髪が芽吹くためのいわば場所空け作業が行われているのです。この現象は治療開始から2週間から1ヶ月程度で始まり、長くても3ヶ月以内には収まるのが一般的です。もしこの段階で不安に負けて服用をやめてしまうと、新しく生えかかっていた髪の成長も止まってしまい、治療の効果を一切得られないまま終わってしまいます。初期脱毛は、薬がしっかりと毛根に届き、細胞が反応している証拠であると捉えるべきです。1日100本から200本程度の抜け毛が増えることもありますが、これは一過性のプロセスであり、その後に生えてくる髪は以前よりも太く、寿命の長いものへと生まれ変わります。治療を成功させるための最大の壁はこの初期段階の心理的ストレスに打ち勝つことであり、正しい知識を持って冷静に経過を観察することが、数ヶ月後の劇的な改善への唯一の道となります。
AGA治療の初期段階で抜け毛が増える理由と仕組み