都内のAGAクリニックで数多くの患者のカウンセリングを行っているベテラン医師に、現場での肝機能障害の実態と注意点について話を伺いました。先生によると、AGA治療を開始する前に必ず行う血液検査において、意外にも多くの30代から40代の男性が既に肝臓の数値に何らかの課題を抱えていることが明らかになるといいます。その多くはアルコールによるものではなく、非アルコール性脂肪性肝疾患、いわゆる脂肪肝に起因するASTやALTの上昇です。先生は「肝機能の数値が基準値を大幅に超えている場合、すぐに内服薬を開始することはしません。まずは生活習慣の改善を優先するか、肝臓への負担が少ない外用薬からスタートし、数値が落ち着くのを待ちます」と語ります。血液検査で特に注目すべきは、肝細胞が破壊された時に血中に漏れ出す酵素であるALT(GPT)の数値です。これが30を超え始めると注意が必要であり、50を超えるような場合は一旦治療を保留することもあります。一方で、フィナステリド服用中に実際に重篤な肝機能障害を起こす例は、先生の10年以上のキャリアの中でも片手で数えるほどしかなく、その多くは服用前から肝機能が不安定だったり、他のサプリメントや薬を多用していたりするケースだったそうです。先生が強調するのは、1回の検査結果で一喜一憂するのではなく、継続的な推移を見ることの重要性です。薬を飲み始めて3ヶ月、半年と経過する中で数値が安定していれば、その人の体にとってその薬剤は安全であると判断できます。逆に、自覚症状がなくても数値が右肩上がりの場合は、速やかに原因を特定し、治療の継続可否を判断しなければなりません。最近では肝臓への負担を考慮し、低用量の成分をこまめに摂取する分割投与や、経皮吸収型の製剤を選択する患者も増えていますが、基本は「自分の数値を把握すること」に尽きると先生は締めくくりました。AGA治療は個人の美意識に基づくものですが、医療である以上、科学的なデータという鏡に自分の健康を映し出し、安全性を担保しながら進めるのが現代のスタンダードです。肝臓を無視した治療は、砂上の楼閣に過ぎず、真の自信を手に入れるためには、血液という情報の海から届けられる体の声を真摯に受け止める姿勢が必要不可欠なのです。